カナダ統計局、渡航制限の経済効果を評価

編集: 11月 03, 2020 | タグ カナダ渡航制限、COVID-19

カナダ統計局(Statistics Canada)が発表した新しい調査によると、世界的なCOVID-19パンデミックによる国際国境の閉鎖や国内旅行の制限は、カナダ経済に大きな影響を与えている。これらの規制は公衆衛生を守るためのものではあるが、経済活動の減少という形で、特に旅行やその関連分野でコストが発生している。カナダの中央統計局は、渡航制限によって国内総生産(GDP)が全体で最大371億ドル減少し、50万人以上の雇用が失われる可能性があると結論づけた。これらの損失は旅行経済のさまざまな側面に分かれ、経済の他の分野と比較しても、この分野への規制が深刻な影響を与えることを表している。

カナダCOVID-19の渡航制限による直接的な経済への影響

3月から実施されているカナダの旅行制限の最も明白な影響は、旅行と観光に直接関わる経済分野である。ホテル、レストラン、旅行業者、娯楽施設など、旅行者や観光客に依存する同様のビジネスは、旅行制限の影響で深刻な打撃を受けている。カナダ統計局の試算によると、この部門のGDPへの損失は176億ドルから233億ドルで、それに伴い最大40万6000人の雇用が失われる。報告書が想定する最良のシナリオでも、30万人以上の雇用が失われる。これは、2019年に75万人強を雇用していた部門における大きな損失である。

カナダ渡航制限の間接的影響

経済の一部門で損失が生じれば、当然、他の部門にも影響が及び、2020年の旅行・観光部門への打撃も例外ではない。この部門の損失は、食料生産、自動車販売、公共事業など、経済の多くの分野に重要な二次的影響を及ぼす。カナダ統計局は、これらの産業への間接的な損害が、103億ドルから138億ドルのGDP損失につながると予測している。これらの関連部門における雇用損失は、さらに10万7,000人から14万3,000人に及ぶ可能性がある。

不均衡な影響

旅行規制が旅行・観光部門に与える影響を理解する一つの方法は、カナダ経済に占める旅行・観光部門の割合に比して、同部門が被る可能性のある損失を見ることである。カナダ統計局は、これらの部門に起因するGDPの損失総額は、GDPの約1.3%から1.7%に達すると推定している。カナダ全体のGDP減少率は8%から9.4%と予測されている。これは、旅行・観光業とその関連部門が、カナダ全体のGDP減少額の約14%を占める可能性があることを意味する。これは、2019年に約2%だったGDPへの通常の貢献度からはるかにかけ離れている。COVID-19によって経済の多くの分野が打撃を受けているが、その影響は旅行セクターにおいて不釣り合いに深刻なようだ。

カナダによるCOVID-19渡航制限の今後の経済予測

絶え間なく進展する状況において、統計分析は時として変化する(あるいは変化しない)事象に遅れをとることがある。そのため、これらの数値は、年初に入手可能な統計情報と、年間を通じて旅行制限がどのように変化するかについてのさまざまなシナリオを組み合わせた推定値である。最良のシナリオが適用されるか、最悪のシナリオが適用されるか、あるいはその中間のシナリオが適用されるかは、カナダの旅行政策の将来次第である。多くの国内旅行規制が解除されたとはいえ、国際的な旅行規則は現在のところ、最良のシナリオよりも最悪のシナリオに近いようであり、このことは経済的な損害が低い方の試算よりも高い方の試算に近い可能性があることを示唆している。カナダ国内での渡航規制が解除されたとしても、他国での規制や渡航への消極的な姿勢により、カナダへの渡航者数は引き続き減少し、それに伴い同分野への影響も長期化するだろう。パンデミックが旅行と観光に及ぼす正確な影響を見極めるには、さらなる調査が必要である。

旅行・観光部門の見通し

COVID-19パンデミックは、今後長期にわたってカナダの旅行・観光産業に多大な影響を与えるというのが、本報告書の予測シナリオのいずれが実現しても避けられない結論である。企業も政府も、旅行・観光産業がCOVID以前の水準に戻るまでにはしばらく時間がかかるかもしれないという事実に対応しなければならないだろう。